最高にうざい「山場CM」、あれって効果あるの?


随分前からTVがつまらなくなった言われていますが、その要因の一つに企業側が出稿するメディアが変わってきたことがあげられます。

TV、ラジオ媒体の広告からインターネット広告にシフトしてきたことによってTV局の広告収益が落ち込み、番組制作に費用を掛けられなくなったことが大きい理由でしょう。

中国では2015年には既にネット広告がテレビ広告を上回り、米国では2017年にはテレビを追い越すだろうと言われています。

日本のネット広告はまだTV広告の半分程度ですが、その伸びは驚異的でテレビを追い越す日はそう遠くないでしょう。

TV広告の減収を受けて、最近、TV番組の質が落ちてきたように感じるのは私だけではないと思います。

ひな壇芸人ばかり使ったバラエティ番組、なんでもクイズ形式するバラエティ番組ばかりで、正直食傷気味です。

バラエティが増えた理由とは

単価の安い若手芸人を使うことで制作費を抑えているのは素人目で見てもわかります。

自社スタジオの固定セットにひな壇芸人と準若手のMC+女子アナがいれば、1度の収録で2週分収録することが出来ますからね。

いや、それ自体が悪いと言ってるわけではありません。バラエティ番組が無いとTVはつまらないですからね。

問題なのはコマーシャルの入れ方です。

悪い印象しか残らない山場CM

watchingTV

みなさんも見覚えがあると思いますが「正解はCMの後!」とか、映像の一部をぼかしたり隠したりしてコマーシャルへ、というような場面に遭遇したことがあるかと思います。

これは通称”山場CM”と言って、CM中に視聴者がチャンネルを変えることを防ぐために考えられた手法です。

番組がつまらなくなるとCMのタイミングで視聴者がチャンネルを変えてしまい、スポンサーから「何のために高い広告料を払ってるんだ」とクレームが来たことから考え出された手法と言われています。

TV局や広告代理店は広告の価値を高めるために、CM中でも視聴者が離れないよう”山場CM”を考え出したわけです。

しかしこの山場CM、1度ならまだしもCM明けにもう一度CM前のシーンを見せられる(「またぎ」とか「水増し」と呼ばれる)ので、見ている方としてはかなり不快です。

こんな番組が1つ2つだったらまだしも、バラエティ番組だらけになったものだから朝の情報番組からゴールデンタイムまで山場CMだらけで、TVを見るだけで疲れてしまいます。

特に某放送局の世○仰天○ュースの山場CMは酷すぎます。

・クライマックスに近づく→CM
・CM明けにもう一度戻って放送、クライマックスに近づく→CM
・CM明けに違う視点から放送、クライマックスに近づく→スタジオトークに切り替わる
・スタジオトークから別のストーリーへ(さっきのストーリーは?)

始めは山場が気になってCMも我慢して見ていましたが、だんだん視聴者をバカにしている製作側の意図が透けて見えてきて、次週から見るのを辞めてしまいました。

そもそも「我慢してCMを見ている状態」っておかしくないですかね?

視聴率はキープできるかもしれないが….

社会心理学者の榊博文氏の調査によると、このような山場CMは日本40%に対してアメリカ14%、イギリス6%、フランスは0%(!)だそうです。(榊博文・今井美樹・岡田美咲・出羽かおり「番組内CM提示タイミング が視聴者の態度に及ぼす影響(下)」日経広告研究所報 2004)

このような”山場CM”という手法で視聴者に強引にコマーシャルを見せても、86%の人は「不快である」と感じ、CM明けのシーン繰り返しには74%の人が「イライラする」との調査結果もあります。

そもそも、CM中にチャンネルを変えられてしまうのは視聴者の興味が番組から離れた結果であって、本来であれば番組コンテンツの魅力を上げる努力をすべきなのですが、小手先で視聴者をCMに繋ぎ止める”山場CM”は単に編集だけで広告単価を維持しているに過ぎません。

広告主は「86%の視聴者が不快」と感じている枠に大金を払って出稿し、一方で視聴者は不快なCMを見せられる。嬉しいのはTV局と広告代理店だけ、という構図です。

これでは、広告主は視聴者の反感を大金を払って買っているようなものです。しかもその広告宣伝費は、視聴者である私達消費者が支払った購入代金から出ているという、なんとも間抜けな話です。

この”山場CM”と名づけたのは慶応大の榊博文教授なのですが、教授の分析によると、

自らのテレビ視聴体験から調査を思い立ち、山場CMと命名した榊教授は「テレビ局は視聴率ダウンを避けようと始めたのだろうが、広告効果を下げているばかりでなく、CM明けの期待外れの展開を学習した視聴者のテレビ離れを招いているのでは」と分析する。

引用:http://www.asahi.com/culture/tv_radio/TKY200711060131.html

もうずいぶん前からこのような考察があったんですね。

TV関係者は「インターネットの台頭でTV広告が食われている」とまずネットの影響を理由に挙げますが、山場CMのような視聴者を無視した広告手法で自らの広告媒体の価値を下げていることになぜ気が付かないのでしょうか?

TV業界、広告業界、さらには大手企業の広告・宣伝部門といえば、有名大学卒の優秀な学生が集まってくる難関就職先であり、何倍もの競争を勝ち抜いてきた人達です。

一般には「優秀」と言われる人達が集まって”山場CM”みたいなマヌケなことをやっているのは、もはや笑えないコントです。

テレビ東京が山場CMと決別宣言

そんな中、2015年の7月末にテレビ東京が山場CMをつかったコマーシャルを行わない方針を打ち出しました。

テレ東は「大学での研究結果などから山場CMが商品好感度を下げていることがわかっており、超高齢化社会に突入する日本において山場CMをやるメリットが無い」として、「今後はコンテンツで勝負していく」とのこと。

これこそが本来の姿ですよね。

そもそも、番組がつまらなくなってCMでチャンネルを変えられてしまうことに対して山場CMを打つ、というのは小手先の対応であって、全くもって根本的な対応ではありません。

やはりTVはコンテンツで勝負してこそ、広告媒体としての価値が高まるのではないでしょうか。