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終身雇用が日本の経済成長を阻害している


今、日本の平均有効求人が1.36倍を超えて25年ぶりの高水準なのだそうだ。

2016年度の税収見通しが57兆6000億と2013年度に比べて10兆円も増える見通しで、バブル末期(1990年)の税収60兆円に迫る勢いである。

これだけみれば日本は空前絶後の好景気を迎えているように見えるが、労働者の感覚としてはそんな雰囲気が全く感じられない。

確かに一部の世界的な大企業は円安の後押しもあって増収増益を記録しているが、それ以外の企業は依然、不景気の波から抜け出せていないように感じる。

海外企業に押されて元気が無い日本の企業や、粉飾決算などの不祥事、過労による自殺などを聞くたびに、これらの根源は終身雇用による人材市場の歪みが原因なのではないかと思うようになってきた。

なぜそう思うのかを、過去の日本経済を振り返りながら考えてみた。

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高度経済成長時代

かつての高度経済成長時代、日本のものづくりは最強だった。

作れば作っただけ売れた時代。

賃金は右肩上がりで増加、可処分所得も増えて日本人は裕福になったが、反面、人件費が高くなるにつれて製造コストが上昇し、商品の競争力が衰え始めてくる。

1985年のプラザ合意によって日本は急激に円高が進み、それまでの貿易黒字が急速に減少した。

そうなると必然的に製造拠点は人件費の安い地域に移転して、やがて産業の空洞化が訪れる。

これは何も日本だけの話ではない。先進国ではみな経験する現象である。

円高によってダブついた金が不動産に向かいバブル景気が訪れるが、1991年をピークにバブルが弾けてしまう。

それ以降、日本はデフレに突入し20年以上経った今も経済成長率は以前低いままだ。

生活している実感からいえば、日銀や政府発表の成長率を実感することは正直難しい。

かつてはGDP世界第二位を誇った日本だが…

かつて日本のGDPはアメリカに次いで世界第二位にまで上り詰めたことがあるが、今では一人当たりの名目GDPが28位(2021年)とシンガポール(5位)、香港(20位)よりも低い。

最近東南アジア方面に出かけても、以前ほど安く感じなくなってきた。

…なんて言ってる僕は、大企業でバリバリ海外出張をこなすビジネスマンのように聞こえるがそうではない。中小企業で製品開発に従事している、出張はいつもエコノミークラスで、滞在先では安宿ばかり使っているしがないエンジニアだ。

話を戻そう。

以前、中国では品質はともかく何でも値札をあまり見ずに買い物ができたが、最近は商品によっては日本とさほど変わらないものも多くなってきた。

深センあたりのちょっとしたレストランで食事しても値段は日本とあまり変わらない。まあ深センは中国の中でも物価が高いところではあるが、それにしても同じ金を払うのであれば日本のほうが安くて美味しいとすら思う。

少し前まで中国人観光客の爆買が日本の観光収入を押し上げていた。これは単に中国人の中間層が裕福になっただけでなく相対的に円が安くなったことも要因の一つだろう。

中国人爆買客が下火になってからは、インドネシア人やタイ人の富裕層が日本の高級レストランで食事を楽しむ姿をよく見かけるようになった。

東南アジアの購買力が上がってきたと見るか、日本が安くなったと見るべきか。

一向に良くならない経済

政府の無能さなのか野党の無責任体質なのか、恐らく両方の理由だと思うが、打つ手打つ手が全く功を奏せず、ただひたすらデフレ経済下であがいているのが今の日本だ。

肩書きが立派な経済学者や一流大学を出た国会議員が知恵を集めても、全く経済が上向きにならない。

一方、民間企業に目を向けると、世界中を席巻した日の丸半導体は見るも無残だし、シャープは投資判断を誤って外資に買われてしまった。

オリンパスや東芝は粉飾決算で会社の存続自体が危うくなっている。

東芝は原発事業の損失も入れると5000億近い赤字で、債務超過状態であることが明らかになった。

すぐに倒産することは無いだろうが、大企業はいざとなれば会社更生法を申請して株を紙屑にすれば借金が合法的にチャラになる。

会社自体は絶対に潰れない。JALと同じだ。

ただその再建の過程で相当数の社員は解雇されるだろう。

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商品競争力の低下

今、日本の生活の中で切っても切り離せないiPhoneもAmazonもtwitterもFacebookもみんなアメリカ企業が作ったものだ。

Appleが傾きかけたとき、その窮地を救ったのがiPodだった。

音響機器としては大したことがない商品だったが、そのデザインと使いやすさ、洗練されたプロモーションが功を奏して爆発的なヒット商品となった。

本来であればこういう商品はSONYが出してもおかしくない。というかSONYが作らなければならなかった商品だと思う。

スティーブ・ジョブスも2007年のインタビューで

「ポータブル音楽プレーヤーの市場を作った日本が”ソフト”を作れなかったからiPodが存在する」

と答えている。

ここで言う”ソフト”はいわゆるソフトウェアのことではなく、市販部品と既存技術を組み合わせれば作れる商品、という意味で”ソフトウェア”と使っている。

iPodはジョブスも認めるように最先端の技術が詰まったハードウェアではない、既存技術を寄せ集めて作った、ただのソフトウェアである。

しかしSONYにはそれが作れなかった。

正しくは、作る技術は十分持っていたがそういうニーズを掘り起こせなかった。

これには様々な要因があると思うが、理由の一つにSONYがただの大企業になってしまったことが挙げられるだろう。

ウォークマンを世に出したときのSONYは、ある意味マッキントッシュを世に出したときのアップルのような勢いがあった。

SONYがリリースする商品は、最先端すぎるが故に初期不良も多く「ソニータイマー」などど揶揄されることも少なくなかった。(買って一定期間が過ぎると壊れる)

しかしそういう初期不良に当たるリスクがあっても買いたくなる魅力が当時のソニー製品にはあった。

人柱になることを承知でSONY製品を所有していることがソニー信者の証でもあった。今のアップル信者と似ている。

今はSONYからカッティングエッジな製品がリリースされた話を耳にしなくなって久しい。

終身雇用、年功序列が及ぼす悪影響

近年の日本企業の元気の無さや企業不祥事を聞くたびに、これらの諸悪の根源は企業の年功序列、終身雇用の歪みが原因なのではないかと考えるようになってきた。

もちろん一義的には不祥事を起こす人間の問題なのだが、年功序列や終身雇用という雇用システムがそういった人材を知らず知らずのうちに育んできたのではないかと思うのだ。

そう考える理由をいくつか挙げてみたい。

ちなみに以下の内容を友人、知人と話すと意見が真っ二つに分かれて面白い。

人間は同じ場所に居続けると成長しなくなる

最先端な製品をリスクを恐れずどんどんリリースすることで会社の付加価値を上げていくことを信条とするSONYが、ここ十数年ヒット商品に恵まれていない。

これは人材の高齢化による弊害ではないかと言われている。

ウォークマンやAIBO、VAIOを世に出した開発者は当時は新進気鋭なエンジニアであっただろう。もしかすると今もそうかもしれない。

しかし会社全体としてみたとき、身分が安定して自分から辞職しない限りクビにならない組織にいると、どうしてもイノベーティブ(革新的)な発想が生まれづらくなる。

ヒット商品が出れば売り上げが伸びるし売り上げが伸びれば人も増える。人が増えれば管理体制が強化されるのが大企業の常だ。

そうなると以前は簡単にチャレンジできたことが、今度は計画を作って費用対効果を上手に説明できないとチャレンジできなってくる。

ヒット商品のアイデアなんて計画して作れるものではない。

商品企画部門やエンジニアの「こんなことしてみたら面白いかも」とか「これとあれをくっ付けたら面白いんじゃね?」みたいな、思いつきに端を発しているケースが多い。

だからこそ、世間の常識とか業界の常識に染まっていない若くてとんがった人間がいたほうが、面白い商品やサービスが生まれやすい。

 

一方、終身雇用、年功序列の組織では、年齢を重ねれば重ねるほど、人は守りに入ってしまう。

例えば、40代の課長職がいたとしよう。

子供が2人いて、上は私立高校3年で今年大学受験、下の子は中学2年で妻は近所にパート勤めしているというモデルケースのようなサラリーマンが、社内で周囲の反対を押し切り、自分の進退を賭してまで開発を進めることなんてまず無いだろう。

たまに日経ビジネスや東洋経済あたりにそういう武勇伝的なインタビュー記事が出たりするが、それは本当に極々一部の人の話だ。

大体そういう人は、仮に開発が失敗して居づらくなったとしても、ベンチャー企業を立ち上げたり、実現するための仲間が寄ってくるような人望を持っていたりと、職務経歴書には出てこない素質を持っている人なので、年功序列・終身雇用のシステムが無くても生きていける人材である。

そもそも、「どうしてあなたはそんなつまらない大企業にいたの?」って感じの人だ。

そういう人を除けば、大抵の人間はやりたいことがあっても、周囲の反対や雑音を説得できず、今の生活が転覆するリスクを犯してまでは自分の意見を突き通せない人がほとんどだろう。

でもそれって、チャレンジ精神を失ったこの40代課長が悪いのだろうか?

僕はそうは思わない。

これは個人の気質の問題ではなく日本の雇用環境が30代40代(あるいは50代)を守りに入らせているからだ。

なぜなら日本は転職のハードルが高いが故に、簡単に辞められないからだ。

日本の会社は、若年層に安い賃金で滅私奉公を強いて、40代を過ぎたあたりから仕事量以上のお金を払って報いるようないびつな賃金体系になっている。退職金も勤続20年以下だと大してもらえない。

つまり若いうちに辞めると損するような仕組みが転職に対して二の足を踏ませ、思い切った発想を出しづらくさせている

中には若い頃からとんがったアイデアマンで、次々と会社のコア技術やヒット商品に関わって定年まで勤め上げる、と言う人もいるかもしれない。

しかし自分の勤務先で周囲を見回してみて欲しい。そんな人いるだろうか?

多くは長く勤めているうちに凡庸な人材となり、給料が下がらない程度の平均的な評価を目標にして「流しに入っている」おじさんが多くなってしまう。

これは全ておじさんたちが悪いわけではない。

終身雇用というシステムがこういうおじさん達を作ったのだ。

先に述べた、SONYにヒット商品が生まれなくなったのは社員が高齢化したから、というのは単に社員が高齢化したからダメなのではなく、終身雇用制度が守勢に入る高齢社員を生み出すからダメなのだ。

中途採用の壁

多くの日本企業が新卒志向で、長い年月を掛けてプロパー社員から管理職を作り、更にその管理職から経営陣を構成する。

一部で中途採用はするものの、あくまでも自社に無い技術を持った人間の採用であって採用されても外様だ。プロパーを超えるのは難しい。

これは会社の中枢を担っている多くの40代~50代が新卒で入社してキャリアを積んで今の地位になっているため、外部からの参加者(転職者)に対して身構えてしまうからだろう。

表向きは「優秀な能力を持った人間が社内に新しい風を吹き込んで組織が変わることを期待したい」などとは言うものの、実のところ「いつ優秀な転職者に寝首をかかれるか、気が気でならない」というのが本音だろう。

平たく言えば「よそ者が急に俺たちの上司になるのはイヤだ」である。

これは終身雇用によって雇用流動性が低く、外部からの人材流入が少ないことによる弊害と言える。

僕も以前転職したとき、転職先の部長が正に「君にはウチの部門の凝り固まった慣行ややり方をぶっ壊すぐらいの意気込みでやって欲しい」と言って懐の深いところを見せていたが、何年かするうちに僕が部長職に推薦されていることを知ってからは、目の色を変えて(僕の)あら捜しに奔走した姿を見てガッカリしたことがある。

何と言うか、うまい例えが思い浮かばないが、入社時に雲の上の存在で尊敬の念を抱いていた上司が、十数年後に実はあまり大したことが無かったことに気づいたときのガッカリ感、と言えば伝わるだろうか。

「出る杭は打たれる」ということわざは当然知っていたが、まさか自分が打たれるとは想いもしなかった。

異端児は早々と会社を去り、残るのは社畜とイエスマン

大企業の取締役会はほとんどが生え抜きのプロパーで構成されている。

人生の全てを会社に捧げた人間の中で這い上がってきたものだけが入れるクラブだ。

そんな倶楽部には、自分たちの地位を脅かさずそれでいて優秀な人間だけが推薦される。「自分たちの地位を脅かさない」というところがポイントである。

どんなに優秀でも、隙あらば寝首をかくような野心を持った人間は部長止まりである。

古くからある日本の大企業は多かれ少なかれどこもそんな感じだろう。

僕がかつて在籍した会社も、経営陣は実力というよりは役員の覚えがいい人が引き上げられる会社で、経営幹部にはイエスマンしかいなかった。

どんなアイデアを上げても「俺はいいと思うけど、きっと常務が首を縦に降らないから無理」とか「いいアイデアだと思うけど社長がOKするとは思えない」とか、とにかく上役の意向ありきの判断でお客さんのほうを向いていない。

こういう環境ではトップが決めたことが順繰りに下に押し付けられていき、それに対する返事はイエス以外はあり得ない。そこでノーが言える人は、もれなく経営幹部からの嫌がらせと左遷が待っている。

そんな風土では、東芝のように「チャレンジ」と称した数値目標(ノルマ)を課せば、粉飾が行われることは想像に難くない。

優秀な人間はそういう組織に早く見切りをつけて会社を飛び出していく。

残るのはイエスマンか、表立って文句を言わない「社畜」ばかりとなる。

人材流動の悪さが日本人の生産性を削ぐ

終身雇用はモノを作れば作っただけ売れた時代に、人材を安定的に確保するために行われてきた。

定期昇給、手厚い福利厚生を用意して「わが社に入れば一生安泰ですよ」と言って人材を囲ってきた。

経済が右肩上がりで人口も購買力も右肩上がりの時代には、他社に先駆けて人材を確保するためにも、それはある意味合理的なシステムだったと言える。

しかし今は長いデフレ環境のせいで商品購買力は下がり、安いものだけが飛ぶように売れる時代になった。

新入社員の初任給が20年前とほとんど変わらないことからも、モノの価値は基本的にこの20年変わっていない。むしろ安くなったものが多い。

今の日本人はモノが満たされてしまい欲しいものが無くなったというのもあるだろう。だから一般的な製品を作っても売れない。

ニッチな市場で特定のファンにぶっ刺さる商品であれば、高くても売れる時代。

こういう時代には「みんなで知恵を出し合って難局を乗り切る」というより、尖がったヤツの突飛なアイデアから膨らませたほうが市場を掴みやすい。

そういう「尖ったアイデア」は人材流動が激しいところでないと生まれづらいものである。

人生、流しに入ったおじさんサラリーマンにイノベーティブな発想は出ないし、ニッチなマーケットへの提案なんて出来ない。

それに日本人のホワイトカラーの生産性は19年連続で主要先進7カ国中最下位という、なんとも不名誉な記録を更新し続けている。

終身雇用の弊害の中の一つに、仕事が属人化してしまうことが挙げられる。

いわゆる「難しいxxは◎◎さんに聞け」的な感じに仕事が固定化されやすい。「いやー、やっぱり××は◎◎さんがいないとダメだな」みたいな感じ。

「◎◎さん」が本当にその仕事のエキスパートでどの会社に行っても通用するスキルを持っているのであればいいのだが、中には本当はそのやり方が非効率なことに気がついているにもかかわらず、自分の保身のためにそれを改善せず放置している人もいる。

なぜなら、その非効率な手順をさっと出来るのは社内には自分しかおらず、改善しないことで自分の存在価値を維持できるからだ。

会社に新しいシステムを導入しようとすると、使いづらいとか、今までは~が良かったのに、とか文句が多い人はこの手のタイプが多い。

だって新しいシステムが導入されて仕事が効率化されてしまうと自分の存在意義が無くなってしまうから。

なんとも小さい話だが、これも終身雇用の弊害であろう。

人材の流動が激しい会社であれば仕事を属人化には出来ないし、絶えず入ってくる新しい人材が「こうやればもっと楽になるのに」といったアイデアをどんどん注入してくれる。

これは新陳代謝が活発なことによるメリットの一つだ。

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終身雇用こそ長時間残業の温床

長時間労働による自殺が起きるたびに、残業規制の議論が盛り上がる。

国会で野党が「残業時間の上限を法律で規制すべきだ!」と口角泡を飛ばして議論しているが、全く見当違いの議論だ。

法律で残業時間の上限を規制したところでホワイトカラーの生産性が改善されなかったら意味が無い。企業の業績が下がり税収が落ち込むだけだ。

そもそも、法律で残業時間を規制するのは「臭いものに蓋」をするだけで、何の解決にもならない。

本来はその「臭いの元」を除去しなければならない。その臭いの元が終身雇用なのだ。

終身雇用というシステムが人材の流動性を悪くしホワイトカラーの生産性を下げていることは前に述べた通り。

解雇要件が緩和されれば、人材の流動性が高まり、残業が多くてつらい職場などさっさと辞めて次の職場を探せるようになる。なぜなら他社も負荷が集中した有能な人が辞めていくから、慢性的に人手不足となる。

残業が多くて辛い職場なのになぜ辞めないのか?

それは次の職場が見つけづらいからに他ならない。人材の流動性が欧米より低い日本では転職のハードルが極めて高いからだ。

「いや、そんなことはない。だって転職サイトに中途採用案件が山ほど出てるじゃないか。」と思う人は、元々優秀な人か、もしくは転職したことがない人だろう。

転職サイトに募集を出している企業は、若くて融通が利く30歳前後までの人間が欲しいのだ。

今の労働法では解雇は「整理解雇の4要件」に合致しないと解雇できない。

整理解雇の4要件とは

1.人員整理の必要性
2.解雇回避努力義務の履行
3.被解雇者選定の合理性
4.手続きの正当性

で、これらの要件を満たしているかどうかで判断させる。この内容は諸外国と比べてかなり厳しい要件である。

そのため、今の日本は安易な理由では従業員を解雇できないため、できるだけ若くてスキルが高くて長く働ける人材を採用しようとする。

40代50代の凡庸な人材は求めていない。

中高年人材は、よほど有能な人しか採用されないのが現状だ。

だから多くの中高年は、何十社と応募して現実を知り、条件を落としてようやく採用が決まるのが現実だ。

当然給料は以前よりも低くなる。

それでも採用される人はまだいいほうで、中には1年以上求職しても決まらず、コンビニのアルバイトで食い繋ぐ人もいる。

解雇要件の緩和で転職市場の人材流動が活発になれば、企業は慢性的に人手不足になる(イヤなら辞める人が多い)ので採用条件も自然と下がり、労働意欲のある中高年が何ヶ月も求職活動しないと働き先が見つからない、というようなことが減少するだろう。

日本は終身雇用と年功序列を捨てれば、再び企業が活性化する

人材流動を活発にするため、解雇要件を緩和すべき

欧米ではホワイトカラーの職種ではアップ・オア・アウトという考え方が一般的だ。

これは、採用された職種で一定期間の間に昇進(アップ)するか、昇進出来なかったら去れ(アウト)ということ。

ちなみに最も日本的な外資といわれている日本マイクロソフトですらアップ・オア・アウトの風土だ。

一見非情に見えるシステムだが、このシステムが機能すると無能な人材が滞留しないし、常に新しい人材が入ってくるので組織の新陳代謝が活発になる。

日本人的な目でみると一見、「人材を使い捨てにしている」ように映るがそうではない。

アウトになった人材にしてみれば、自分の今の実力ではそのポジションにふさわしくないことを知ることが出来るので、足りないスキルを補うために大学に入りなおすなど、自分を客観視した行動を取ることができる。

もし「有能な俺様を解雇するなんてバカな会社だ」と思う人は、再度同じポジションで他社に応募してみればいい。そこでも同じように解雇されればさすがに勘違い君でも自分の能力を見つめ直すだろう。

もしそうではなく、転職先で能力を発揮して評価されたとすれば、前の会社が勘違い君だったことになる。自分の能力を生かせない会社を解雇されて良かったね、って話になる。

いずれにせよ、アップオアアウトは自分を客観視するきっかけを与えて、社会全体で人材を適正化しているとも言える。

アップ・オア・アウトのようにアップ(昇進)しない限り出て行け、というのは性急過ぎて日本社会に馴染みづらいと思うが、能力的に問題のある社員を正当な手続きで解雇出来るよう、解雇要件を緩和することは必要だろう。

ミスマッチな人材が留まることは、会社にも本人にもマイナスでしかない。

定年制を辞める

特にアメリカでは、採用時に年齢、性別で差別することを法律で禁じられている。

年齢を聞けないから、定年自体存在しない。(軍を除く)

アメリカでは基本、募集要件に合致していれば18歳だろうが65歳だろうが応募出来るし、もし採用されれば18歳も65歳も同じ給料でスタートする。年齢で差別出来ないからおのずとそうなる。

だから雇用契約はキッチリ行う。

契約書にはやるべき業務内容が明記されそれ以外はやる必要がない。だから契約に入っていない事柄で評価されたりすると訴訟に発展してしまう。

これが本来の「ジョブ型雇用」だ。

日本人には世知辛いと感じてしまうかもしれないが、そうすることで従業員に要求する仕事内容が明確になるので働くほうもやりやすい。

このように本当の意味での年齢不問になれば、日本のように「単金が安くすむから若いヤツを雇う」とか「50代は単金が高い上に定年が近いから、だったら若いヤツのほうがいい」という雇用判断になりづらくなる。

被雇用者にしても働ける人は何歳までも働けるので、わざわざ国が「65歳まで雇用しなさい」なんて言わなくていいのだ。

国がこんなことを言わなければならないのは、多くの企業が終身雇用、年功序列を維持するために定年制を設けているからだ。

今の60歳は1970年代の60歳とは全く違う。健康状態も体力も1970年代に比べて10歳は若返っている。

だから60歳でバッサリ切ってしまうのは勿体無い。

これから少子高齢化に向かうのだから、この60歳~の人材を小手先で雇用延長するのではなく、雇用制度全体を変えて活用すべきである。

ブラック企業問題も解決する

ブラック企業問題、ブラックバイト問題などすっかり「ブラック~」というのが定着した感があるが、これらの問題は欧米には存在しない。

なぜなら、イヤな職場はさっさと辞めればいいから。

人材流動性が高い社会は、辞めても次の職場がすぐに見つかるので、イヤだったらさっさと辞めてしまうのが一般的だ。

体調に異変をきたすまで我慢することはない。

ブラック企業のほうも、キツいことをやらせればすぐに辞められてしまうので、給料を上げるか職場環境を改善しなければ社員が定着しない。

つまり人材流動性の高さが企業がブラック化することを未然に防いでいるとも言える。

だから多くの外国人が「日本人はなぜ体や精神を壊すまで会社に忠誠を尽くすのか?」といぶかしがるのだ。

「日本人は我慢を美徳とする国民性だからギリギリまで我慢してしまう」なんて的外れなことを言うコメンテーターがいたが、今の日本人はそんなに我慢強くない。

もし次の職場が見つかりやすい社会だったら、さっさと辞めて今の苦しみから逃れる選択をする人が大多数のはずだ。

それでも終身雇用は無くならない?

これまで述べたように、僕は終身雇用を撤廃しないとホワイトカラーの生産性は改善しないし残業も減らないしブラック企業も無くならないし海外企業との格差がどんどん開いていくと考えている。

しかし、それでもいままで年功序列、終身雇用にどっぷり浸かってきた社会はそう簡単には変えられないだろう。

なぜなら、終身雇用の撤廃は今の社会の中枢を担っている30〜50代の既得権を奪うことになるからだ。

特に40~50代の大企業のサラリーマンや公務員は自分たちだけは何とか定年まで逃げ切りたいと思っているはずだ。(もしかすると中小企業のサラリーマンでも安定している業種の人たちは同じくそう思っているかもしれない)

それが脅かされるのだから「解雇要件の緩和?とんでもない」と与野党含めて大合唱になることは目に見えている。

それに無事逃げ切った60歳以上の有権者も、自分たちの経験から法改正には反対に回るだろう。

そうなると、労働法改正による解雇要件の緩和などは不可能に近い。

 

本来であれば40~50代は会社のお荷物などではなく、それまでに培ってきた知見と経験を基にもっともっと社会に貢献できる人達である。

終身雇用で人材を囲い込んだ挙句にお荷物扱いされるのは企業や本人にとってマイナスになるだけでなく、社会全体の損失だと思う。

解雇規制の緩和は政治の力に期待したいところだが、与野党の今の体たらくではそれに期待するのは無理を通り越して不可能に近い。

そのため、日本が経済危機で破綻してIMFの管理下で再建するとか、太平洋戦争が終結したときのように一度国全体がリセットされない限り、新しい制度設計は出来ないと思う。

行くも地獄、戻るも地獄なのが今の日本の雇用環境なのだ。

現在の自身の市場価値はどのくらいか?

会社からお荷物扱いされても歯を食いしばってしがみつくのも一つの方法だが、そうなる前に自身の市場価値がどのくらいなのかを知っておくのは、この先の人生に対するリスクヘッジだ。

自分自身の市場価値を知るには転職サイトに登録してみるのが手っ取り早い。

転職サイトに自身の職務経歴を登録すれば、どんな求人がどのくらいの年収で求人が出ているか知ることができる。

自分では大したことがないと思っているキャリアも、実は他社から見ると喉から手が出るぐらい欲しいスキルだったりするので、一度第三者の目で自分のキャリアを棚卸ししてみるといいだろう。

将来性のある業種であれば中高年でも年収アップできる求人情報があるかもしれないし、逆に斜陽な業種だと今と同じような給料は望めないかもしれない。

いずれにせよ、自分の市場価値が低かったとしても悲観的になる必要はない。

市場価値が低いことがわかれば、市場価値があがるようにキャリアアップするにはどうすればいいか?どんな自己啓発が必要なのか?を考えるきっかけになる。

ほとんどの人は今の会社にしがみついて人生を終えることしか考えていない。

キャリアの棚卸しをするということは、そういう人たちより一歩前に踏み出すことになる。

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