終身雇用が日本の経済成長を阻害していると思う理由


今、日本の平均有効求人が1.36倍を超えて25年ぶりの高水準だそうだ。

アベノミクスの効果なのか、2016年度の税収見通しが57兆6000億と2013年度に比べて10兆円も増える見通しで、バブル末期(1990年)の税収60兆円に迫る勢いである。

これだけみれば日本は空前絶後の好景気を迎えているように見えるが、労働者の感覚としてはそんな雰囲気が全く感じられない。

確かに一部の世界的な大企業は円安の後押しもあって増収増益を記録しているが、それ以外の企業は依然、不景気の波から抜け出せていないように感じる。

海外企業に押されて元気が無い日本の企業や、粉飾決算などの不祥事、過労による自殺などを聞くたびに、これらの根源は終身雇用による人材市場の歪みが原因なのではないかと思うようになってきた。

なぜそう思うのかを、過去の日本経済を振り返りながら考えてみた。

高度経済成長時代

かつての高度経済成長時代、日本のものづくりは最強だった。

作れば作っただけ売れた時代。

賃金は右肩上がりで増加、可処分所得も増えて日本人は裕福になったが、反面、人件費が高くなるにつれて製造コストが上昇し、商品の競争力が衰え始めてくる。

1985年のプラザ合意によって日本は急激に円高が進み、それまでの貿易黒字が急速に減少した。

そうなると必然的に製造拠点は人件費の安い地域に移転して、やがて産業の空洞化が訪れる。

これは何も日本だけの話ではない。先進国ではみな経験する現象である。

円高によってダブついた金が不動産に向かいバブル景気が訪れるが、1991年をピークにバブルが弾けてしまう。

それ以降、日本はデフレに突入し20年以上経った今も経済成長率は以前低いままだ。

生活している実感からいえば、日銀や政府発表の成長率を実感することは正直難しい。

かつてはGDP世界第二位を誇った日本だが…

かつて日本のGDPはアメリカに次いで世界第二位にまで上り詰めたことがあるが、今では一人当たりの名目GDPが26位(2015年)とシンガポール(9位)、香港(19位)よりも低い。

最近東南アジア方面に出かけても、以前ほど安く感じなくなってきた。

…というとなんか大企業でバリバリ海外出張をこなすビジネスマンのように聞こえるが、僕は中小企業で製品開発に従事している、出張はいつもエコノミークラス、現地では安宿ばかり使っているしがないエンジニアだ。

話を戻そう。

以前、中国では品質はともかく何でも値札をあまり見ずに買い物ができたが、最近は商品によっては日本とさほど変わらないものも多くなってきた。

深センあたりのちょっとしたレストランで食事しても値段は日本とあまり変わらない。まあ深センは中国の中でも物価が高いところではあるが、それにしても同じ金を払うのであれば日本のほうが安くて美味しいとすら思う。

少し前まで中国人観光客の爆買が日本の観光収入を押し上げていた。これは単に中国人の中間層が裕福になっただけでなく相対的に円が安くなったことも要因の一つだろう。

中国人爆買客が下火になってからは、インドネシア人やタイ人の富裕層が日本の高級レストランで食事を楽しむ姿をよく見かけるようになった。

東南アジアの購買力が上がってきたと見るか、日本が安くなったと見るべきか。

一向に良くならない経済

政府の無能さなのか野党の無責任体質なのか、恐らく両方の理由だと思うが、打つ手打つ手が全く功を奏せず、ただひたすらデフレ経済下であがいているのが今の日本だ。

肩書きが立派な経済学者や一流大学を出た国会議員が知恵を集めても、全く経済が上向きにならない。

一方、民間企業に目を向けると、世界中を席巻した日の丸半導体は見るも無残だし、シャープは投資判断を誤って外資に買われてしまった。

オリンパスや東芝は粉飾決算で会社の存続自体が危うくなっている。

東芝は原発事業の損失も入れると5000億近い赤字で、債務超過状態であることが明らかになった。

すぐに倒産することは無いだろうが、大企業はいざとなれば会社更生法を申請して株を紙屑にすれば借金が合法的にチャラになる。会社自体は絶対に潰れない。

JALと同じだ。

ただその再建の過程で相当数の社員は解雇されるだろう。

会員制求人サイト『BIZREACH(ビズリーチ)』

商品競争力の低下

今、日本の生活の中で切っても切り離せないiPhoneもAmazonもtwitterもFacebookもみんなアメリカ企業が作ったものだ。

Appleが傾きかけたとき、その窮地を救ったのがiPodだった。

音質的にはさほどでもない商品だったが、そのデザインと使いやすさ、プロモーションの格好良さが功を奏して爆発的なヒット商品となった。

本来であればこういう商品はSONYが出してもおかしくない。というかSONYが作らなければならなかった商品だと思う。

スティーブ・ジョブスも2007年のインタビューで「ポータブル音楽プレーヤーの市場を作った日本が”ソフト”を作れなかったからiPodが存在する」と答えている。

ここで言う”ソフト”はいわゆるソフトウェアのことではなく、市販部品と既存技術を組み合わせれば作れる商品、という意味で”ソフトウェア”と使っている。

iPodはジョブスも認めるように最先端の技術が詰まったハードウェアではない、ただのソフトウェアである。

しかしSONYには作れなかった。

正しくは、作る技術は十分持っていたがそういうニーズを掘り起こせなかった。

これには様々な要因があると思うが、理由の一つにSONYがただの大企業になってしまったことが挙げられるだろう。

ウォークマンを世に出したときのSONYは、ある意味マッキントッシュを世に出したときのアップルのような勢いがあった。

SONYがリリースする商品は、最先端すぎるが故に初期不良も多く「ソニータイマー」などど揶揄されることも少なくなかった。(買って一定期間が過ぎると壊れるので)

しかしそういう初期不良に当たるリスクがあっても買いたくなる魅力が当時のソニー製品にはあった。

人柱になることを承知でSONY製品を所有していることがソニー信者の証でもあった。今のアップル信者と似ている。

今はSONYからカッティングエッジな製品がリリースされた話を耳にしなくなって久しい。