朝倉未来が主宰する格闘技イベント「Breaking Down」が人気だ。
Breaking Downとは、簡単に言うと街の喧嘩自慢を集めて1分間の時間制限で戦う格闘技イベント。
一般の格闘技イベントと異なるのは、試合時間が1分1Rという限られた時間であること。
ストリートファイトで鍛えた腕自慢の不良、格闘技を囓ったセミプロも参加するなど、どちらかというとアンダーグラウンドにいた人間にスポットライトを当てた新格闘技イベントである。
第一回から数えて既に10回も行われているイベントで、格闘技イベントとしては成功していると言っていいだろう。
しかし、登場する人間が皆、一癖も二癖もある不良達で、そういった人間達が起こすトラブル？に眉をひそめる人達も少なくない。
Breaking Downのメインは試合ではない
「格闘技イベントだから、試合がメインじゃないの？」
と思う人もいるだろうがそうではない。
一般的な格闘技、例えばボクシングならプロライセンス所持が前提であることに加え、体重別、戦績によって試合が組まれるのが一般的だ。
しかしBreaking Downは腕自慢の不良、格闘技をかじった不良など、実力がバラバラである。
そのままランダムに試合を組んでしまうと、実力差がありすぎて一方的な試合になってしまい面白くない。
かと言って体重で細かに区分けしても、格闘技術が違い過ぎれば、これまた面白くないカードになってしまう。
そこで「オーディション」という形で参加者達の腕自慢を披露してもらい、その実力で試合のカードを組むという方法がとられている。
そう、Breaking Downのキモはこの「オーディション」にある。
荒ぶる喧嘩自慢が自己PRでレギュラーファイター陣（ひな壇）と一触即発の掛け合いを見せる。
過去には、「武器を持った10人に囲まれたが、全員素手でぶっ倒した」という参加のエピソードに朝倉兄弟が驚き、スパーリングをさせてみたところ一発でKOされるという、お笑いコント並みの掛け合いがあった。（後に”10人ニキ”と命名される）
スパーリング前までの自己紹介では、笑みを浮かべながら自信タップリに10人ぶっ倒したエピソードを語ったまでは良かったが、朝倉未来に
すると、10人ニキの目が泳いで急にキョドりだすが、あれだけ吹いた手前引き下がれず、即席試合が始まる。
そして10秒も立たずに1発KO。。。
Breaking Downはこのオーディションが一番の盛り上がりだろう。
この一発KOされた御仁は、「武器を持つ10人を一人でボコボコにした」というエピソードとは裏腹に、実際はメチャクチャ弱かったというギャップが面白くて、後に「10人ニキ」と呼ばれBreaking Downの常連となる。
このように、例え弱くてもオーディションで爪痕を残せば、次回のオーディションではひな壇で呼ばれ、知名度を上げることができるため、全国の腕自慢不良やyoutuber, tiktokkerがこぞって応募してくる。
試合自体はそんなに面白くない
オーディションはその掛け合いや禍根を通じて試合が組まれるところまでYoutubeで公開されるが、試合自体はAbema PPVで有料放送となる。
しかし試合そのものはそんなに面白いものではない。
それもそのはず、街のケンカ自慢が1分1Rで戦うので、お互い腕をブンブン振り回して殴り合い、振り回した拳がたまたま当たってKOといった、「素人のケンカの延長」みたいな試合が多い。
ボクシングや総合格闘技など、技術を駆使した高レベルな格闘技を見てきた視聴者には物足りなく感じてしまうことは否めない。
Breaking Downを批判する層は、こういった目の肥えたファンや格闘技経験者が多いのはこういった理由からだ。
生意気な不良がボコボコにされる様を見たい願望
Breaking Downは試合だけ見ても全く面白く無い。
あくまでもオーディションとセットで見ないと成り立たない格闘技イベントである。
Breaking Downは、
という欲望を満たすコンテンツだ。
一般の人は、街で荒ぶる不良連中に眉をひそめるものの、注意できる人は皆無だろう。
普通の会話もままならないヤンキーや不良ラッパーに、その素行を注意したところで返り討ちに遭うのがオチだ。
普段の生活では苦々しい存在の迷惑ヤンキーを、Breaking Downではボコボコにされる無様な姿を拝めるかもしれない。
この欲求こそBreaking Downの人気を支える根底だろう。
という、言い換えれば「悪役がぶっ飛ばされてスッキリしたい」という欲求を刺激して、試合(PPV購入)に繋げる。
つまり、PPVの視聴者を増やすためには、オーディションの盛り上がりが重要なわけだ。
だって試合自体は格闘技術を魅せることはできないのだから。
とは言え、ゴリゴリの不良ばかりではなくお笑い要素もアリ
腕自慢の不良がオラつくのが多いBDオーディションだが、ちょいちょいお笑い要素の高い参加者もいる。
素人以上、芸人未満のyoutuberやtiktokkerが、フォロワー数を誇って参加してくる場面は、単なる不良の乱闘シーンになりがちなオーディションに一服の清涼感を与えてくれる。
もちろん芸人未満なので往々にしてスベるのだが、そこを瓜田やバン仲村が美味しく回す様は、まさにバラエティ番組のひな壇芸人そのもの。
ガチの格闘技ファンにしてみたら、こういうのも苦々しく感じるのだろう。
BDは純粋な格闘技術を競うイベントではなく、エンターテイメント
試合自体は、目の肥えた格闘技ファンには全然物足りないのだが、人々のルサンチマン的な心を晴らすエンターテイメントとしては優秀なコンテンツだと思う。
1分1Rなので、下馬評では有利だった選手が判定で負けたり、ビッグマウスな選手が（観客の期待とは裏腹に）勝ってしまったりと波乱があるものの、オーディションでの禍根を含めると結構楽しめるコンテンツである。
「エンターテイメント」とは言ったが、試合に関してはプロレスのようなブックやアングルは無い。
仮にブックやアングルがあったとして、いくら契約で口外を封じても、ああいったアウトロー的な人々が皆、契約通りに大人しくしているとは考えづらい。
中には「契約上等」と内部を暴露する人間がいてもおかしくないだろう。
しかし現時点では試合に関してはそういった筋書きが用意されていたという話は耳にしないので、試合自体はガチでやっているのだろう。（オーディションであれだけ罵り合った相手と試合後に抱き合って讃え合うのはいささか違和感を覚えるが）
個人的には、Breaking Downはオーディションでストーリーを膨らませて楽しむ、新感覚格闘技エンターテイメントとして見ている。
元反社の瓜田氏やちょっと怪しい事業を営むYoutuberとか、表に出せない参加者が多く、地上波では出来ないコンテンツをネット上で主宰した朝倉未来の感性は鋭い。
コメント