言わずと知れたIT界の巨人、Googleは検索エンジンで世界を制覇した。
インターネットで情報を探すには検索エンジンを使わざるを得ず、ほとんどの人がgoogleを使っているだろう。
というのはgoogleの創業当時からの理念である。
しかしgoogleは、検索するのに費用は取っていない。
世界中、誰でもいつでも無料で検索できる。
googleは検索結果に表示される広告や、Webサイトに表示される広告を主な収入源にしている。
そういう意味ではgoogleは世界最大の広告会社と言える。
検索上位表示の戦い
事業としてWebサイトを運営している企業は、検索結果に上位に表示されないことには新規顧客は掴めない。
検索結果に上位表示されることは売上アップに直結するため、みんなこぞって検索上位を競い合う。
検索エンジンに好かれるようにサイトを特化させていくことをSearch Engine Organization(検索エンジン最適化)という。
いわゆるSEO対策と言われる対応が盛んに行われるようになっていく。
そういった中で、とある企業がWELQというサイトに専門家でない人間が書いた医療情報を大量に掲載することを始めた。
googleの検索エンジンは医療情報、キーワードが大量に掲載されているサイトを評価して検索結果の上位に表示するようになったが、それを目にした医療関係者から「内容が不正確だ」といった指摘や、薬事法に違反するような表記が多く見つかり、運営元の親会社がWELQに掲載する記事全てを公開取りやめにする、という事態に。
記事そのものは、クラウドワークスやランサーズなどで1記事○○円で募集した、専門家でない一般ライターが書いたかなり杜撰な記事だったようで、記事数でサイトのドメインパワーを上げようとしているのがミエミエだった。
YMYLとEAT
そこでgoogleは、YMYLサイトにはEATが無いと上位表示しませんよ、とアルゴリズムを変更した。
YMYL?EAT?何のこっちゃわからないと思うので解説すると、
YMYLサイトとは
の頭文字を取ったもので、お金や生活(健康も含む)を扱うジャンルのことをYMYLと言う。
EATとは
・Authoritativeness(権威姓)
・Trustworthiness(信頼性)
の頭文字を取ったもので、googleがWebサイトの検索順位を評価する指標を指す。
つまりgoogleは、人間の生活に直結するお金や健康に関するジャンルを扱うサイトには、出元が明らかな、信頼できる正確な情報が記載されていないと上位表示しないよ、と検索アルゴリズムを変えてしまったのだ。
これによって、素人が作った不正確な医療情報は検索上位からなくなった。
しかし今度は、それによる弊害が出てきた。
コマーシャルサイトばかりが上位に表示、欲しい情報が見つからない
例えば病気を患うと、最初はその病気の原因、治療法、薬、予後などを調べるだろう。
そういった検索では多くの場合は医療機関の記事が上位表示され、検索する側の検索需要は満たされる。
しかし病気が進行、もしくは治療が進むに連れて、もっと深い情報を知りたくなる。
手術や入院、闘病中の感想など、実際に体験した患者の生の声を聞きたくなってくる。
多くの場合、クリニックや病院の「患者さんからの声」みたいなページが上位に来てしまい、本来知りたい情報にたどり着かない場合が多々ある。
もちろん、クリニックのサイトに掲載してある患者さんの声は嘘ではないのだろう。(と信じたい)
しかしクリニックも商売である。
患者さんの声とは言え、クリニックのバイアスを通じて発信されている情報は、どこかコマーシャルな香りがして、同じ病気で悩む患者としては今ひとつ信用できない、という感情が出てくる。
これは普通の企業サイトにもある「お客様からいただいた声」に似ている。
企業サイトにある声は、当然ながらその企業の製品ユーザの声であり、「オタクの製品はクソみたいに使いづらくてもう二度と使わない」なんて声は絶対に載せないだろう。
しかし、個人が直接発信している情報であればそのフィルタにはかからないわけで、いい情報も悪い情報も吐き出される。
検索する患者はそういう情報を求めている。
なのに、上位に表示されるサイトの多くは、googleのEATに沿ったコマーシャルサイトばかりで、ユーザが真に欲しい情報にアクセスできない。
コンプレックス系キーワードも同様
病気とまでは言わないが、人々のコンプレックス系についても同様だ。
例えば「シミ」や歯の「ホワイトニング」は、検索上位には100%、詐欺商品が並ぶ。
「シミが一発で取れるクリーム」とか、「口に含んでゆすぐだけで歯が真っ白に」みたいな商品が検索上位に上がる。
ちなみにシミが無くなる美容クリームなんて、赤ちゃんの額にシミ加工を施した画像で検索者を煽るなど、かなりやりたい放題だ。
しかも皮膚科医の監修を受けたり「NHKの○○でも取り上げられた」とか、朝の情報番組風に加工した画面キャプチャなどを載せて、権威性や信頼性があるように見せかけている。
googleの検索エンジンは未だにこういうサイトに騙されて、ユーザに誤った検索結果を伝えているのが現状だ。
ちなみに歯のホワイトニングは、歯磨き粉、マウスウォッシュ等では絶対に白くならない。
微妙に、ほんの少し効果があるのかもしれないが、測定器で計測しないとわからないぐらいの違いでしかない。
目で見て「白くなったね」と言われるには、歯科医でのオフィスホワイトニングか、最近増えているセルフホワイトニング(自分で薬剤を塗って紫外線を当てる)しかない。
googleの検索エンジンは進化するのかしないのか
googleの理念は、ユーザファーストであることは間違いないのだが、それでもYMYLに関しては未だにこのような状況だ。
特に医療に関しては、患者の本当の悩みを助ける検索エンジンになっていない。
マイクロソフトのBingは検索エンジンとしてはもうgoogleに勝てないと思っていたが、生成AIで攻勢をかけてきている。
googleはBardで対抗しようとしているが、キャッチアップするにはまだまだ時間がかかりそうだ。
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