そうか、今の若者は「武者震い」を知らないのか

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先日、職場の若い同僚とランチに言ったときの雑談で「武者震い」が話題になった。

なんか話が噛み合わないな~と思っていたら、どうやら若者は「武者震い」のことを

「昔の人が戦の前にビビっている状態」

だと思っていたようだ。

武士が戦の前にビビっているのを周囲に知られないように「武者震いでござる」と強がることだと思っていたらしい。

いやいや、武者震いってそうではなくて、戦を前にして「やってやるぞ!」と意気込んでいると本当に身体が震えるんだよ、それは恐怖による震えじゃなくってね、と説明してもなんかわかってもらえない。

そこで、

体育祭とかでクラス対向の騎馬戦とか棒倒しとかしなかった?
あの前ってなんか気持ちが高ぶって武者震いしたものだけど

と言ったところ

今はそんな危ないことしないですよ

と一蹴されてしまった。

なるほど、今の若者は「やるかやられるか」みたいなシチュエーションにほとんど遭遇しないから、武者震いを体験することなく大人になってしまったのかなと、勝手に納得してしまった。

しかし、彼らの中の一人がバスケット部出身で、彼は「初めてスターターに選ばれて公式戦に出場したときは武者震いした」というではないか。

必ずしも若者はみんな「武者震い」を知らないわけではないらしい。

そういえば昔は今より治安が悪かった

そんな話をしていたら、ふと昔のことを思い出した。

僕は地方の中核都市の出身だけど、1980年代は子供の人口も多かったこともあって、校内暴力が多かれ少なかれどこの街でもおきていた。

どこの街にもヤンキーはいたし、裏通りではちょっとワルそうな高校生が制服のまま普通にタバコを吸っていた時代である。

とは言っても、クローズや東京リベンジャーズのような、学校毎に対立したり「○○狩り」とか言っていきなり襲われるなんてことはほとんどなかった。

ああいうのは完全にマンガの世界のファンタジーで、そのファンタジーを理解できないバカが真似て暴れていたぐらいだと思う。都会ではまた違ったのかもしれないが。

僕のいた街はいたって平和で、マンガのような短ラン・ボンタン・リーゼントみたいなのはいっぱいいたけど、誰が一番ケンカが強いとか、○○高の誰それが一番強いとかどうでもよくて、

「ケンカが一番強いとなんかいいことあるの?」

みたいな空気があった。

なんか

「自分たちが楽しければ、他人が何しようがどうでもいい」

とか

「俺たちは俺たちで好きにやってるからちょっかい出すな」

という感じだった。

昭和の終わり頃の話。

駅前に喫茶店があって、そこは市内のヤンキー高校生の溜まり場だった。

田舎だから電車は1時間に一本ほどしかなく、真面目な高校生は駅内の待合室、ヤンキーは喫茶店と棲み分けができていた。

その喫茶店は、なんと制服でタバコが吸えるという、今では考えられないような素晴らしい喫茶店だった。

そんな喫茶店だと他校の生徒同士で度々乱闘が起きる、、、なんて思うでしょ?

それはマンガの見過ぎってもんで、実際は我々高校生もそんな貴重なお店で乱闘事件なんて起こしたら、電車待ちでタバコが吸えるオアシスが無くなるのだから、「店内での揉め事・乱闘は御法度」という、不文律が先輩達から受け継がれていた。

まるでジョン・ウィックのコンチネンタルホテルのように(笑)

それに狭い街で、中学の同級生を一人挟めば大体知り合いなのだから、そうそうケンカにはならない。

そんな高校生活だったが、とある日、その喫茶店で電車待ちをしながら一服していたところ、中学の同級生2人とばったり合って、一緒に帰ろうと駅に向かっていたときのこと。

駅のトイレの入り口にこのあたりではあまり見かけない制服を着たヤンキー3人がジロジロこっちを見ていた。

さほど気にせずトイレに入り、用を足して出たところ、そのヤンキー3人が

「帰る電車賃が無いから金貸してくれ」

という。

思わず吹き出しそうになったが、どう見ても困って頼み事をしている態度では無いし、後ろの二人は半笑いである。

同級生が

「貸せる金なんてあるわけないやん、派出所にでも行けや」

と言っても、

「俺はお前に頼んでるんだよ」

とヘラヘラしている。

そのやりとりで「あぁこれはケンカになりそうだな~、面倒臭ぇ…」とテンションだだ下がりだったが、ふと

「なんでこいつら俺たちに絡んできたんだ?」
「ってことは舐められてる?」

と思ったらフツフツと怒りが湧いてきて、身体がブルっと震えてきた。

武者震いって「ブルブル」震えるんじゃなくて、「ブルッ」と震えるのが数回来るだけなんだよね。アドレナリンが出て筋肉が収縮して戦いに備えるらしい。

しかも、怒りが大きくなるとなんか涙目になってくる。(俺だけ?)

3対2と不利だけど、黙って金を差し出すほどお人好しではない。

負けるかもしれないけど、二人で暴れれば相手だって無傷では済まないはず、、、と思っていたら、ツレが先に手を出していた(笑)

僕も負けじと参加して3対2のもみ合いになったけど、ツレの猫パンチが相手の鼻にクリーンヒットして大量の鼻血。

こういうのは出血すると一気に冷める。

しかも大声で人が集まってくるので、近所の大人が「なんだなんだ、ケンカか?」と出てくれば、これ以上は続行できなくなる。

ちょうどホームに電車が入ってきたので二人で逃げるように飛び乗り、難を逃れることができた。

武者震いを知らなくても困らないが

大人になってからは、こういうシチュエーションに遭遇することは無くなったが、別の場面で武者震いすることがあった。

とあるファミレスで店員に食ってかかっているおじさんがいた。

聞いていたら、接客態度が気に入らないとか、店員の教育はどうなってるんだとか叫んでいる。

今で言うところの「カスハラ」だ。

当時の店員さんは、歳のころは60代ぐらいか。自分の母ぐらいの年齢だったこともあって、自分には全く関係ない事案だけど、聞いているだけでムカムカしてくる。

これ以上、大声を出すなら止めてやろうと思った矢先に、身体がブルっと武者震いした。

しかし、隣にいた妻はそういう僕の性格を良く知っており、僕を見ながら小さく首を横に振る、「関わらないで」と。

確かに僕のちっぽけな正義感のために、小学生と幼稚園の子供を危険にさらすことは避けたい。

どうしたものかと思っていたら、他の客が110番で通報したらしく、ファミレスの駐車場にサイレンをならしたパトカーが入ってきた。

それを聞いたおじさんは急に声のトーンが代わり、すごすごと引き上げて、一件落着である。

別に正義感ぶるつもりは微塵もないのだが、世の中の理不尽さにはつい声を挙げてしまう傾向にある僕は、穏健派の妻とは時々衝突してしまう。

とは言え、そんな妻も、あまりに理不尽な状況に遭遇すると身体が震えて涙目になるという。

それこそが「武者震い」なのですよ。

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