※当サイトではアフィリエイト広告を利用しています

安い学費で国立大学院卒になれる、”高専”という進路


以前、ひろゆきが「高専卒って意外と優秀」みたいなことをスパチャで語っていたけど、ひろゆきの中では「高専はFランなんかより全然優秀」という評価だった。

実は私も高専卒で、出身校が評価されるのは嬉しいのだが、彼の話の中で若干間違っている情報も散見されたので、ここで改めて高専出身で都内IT企業で働いている私が、高専のメリット・デメリットを語ってみたいと思う。

我が子の進路で高専を選択肢として考えている親御さんの参考になれば嬉しい。

ちなみに私は大学編入せず高専卒の20歳で就職した、上場企業の電機メーカーで働いている50代のおっさんだ。

スポンサーリンク

高専って何?

まず高専とは何ぞや?についておさらいしたい。

高専は正式名称を「高等専門学校」といい、多くは国立で工業や商船(船乗り)を養成する5年制の高等教育機関である。

お堅い話は苦手なので、詳細はwikiをどうぞ。

高等専門学校 - Wikipedia

「専門学校」と称しているので、高校卒業してから入る「アニメーション専門学校」とか「電子情報処理専門学校」と同じ学校と思っている人が少なくないが、学校教育法上の定義では大学と同じ「高等教育機関」だ。

ちなみに高校は中等教育機関なので身分は「生徒」だが、高専は高等教育機関なので「学生」と呼ばれる、ということを高専生は入学時の訓示で聞かされる。「だから君たちは責任をもった行動が求められる~~」という話を入学式で聞かされるのはどこの高専でも同じ。

修業年限が5年

高専は、元々は1960~1970年代の高度経済成長期に、産業界で不足する技術者(エンジニア)を急造するために国費を投じて作られた学校である。

大学卒の人材を待っていられない産業界のため、大学よりも2年少ない20歳で大卒と同程度の技術力をもったエンジニアを排出するために、高校+大学の5年の課程が作られた。

本来であれば高校3年+大学4年なので計7年であるが、そんな悠長なことやってらんねぇ!と、一般教養課程を減らしその分専門課程を厚くすることで、大卒相当の技術力をもったエンジニアを5年で急造するというファンキーな学校だ。

当然、そんなカリキュラムにはメリット・デメリットがあるのだが、それは後ほど。

高専のレベルは地域のトップ進学校もしくは2番手

高専は都道府県に大体1校程度設置されているが、国立ということもあって入試倍率は比較的高い。最近は少子化で倍率もかなり下がったが、平成の初めぐらいは4倍程度あった高専もあると聞く。

なので大体、地域のトップ進学校と同等、もしくは2番手あたりに並ぶ評価というところが多い。もちろん県によって違いはあるが大体そんな感じだろう。

ただ、ここからはあまり皆さん耳にすることがない話をしたい。

国立高専は都道府県でも成績上位校に属するので、成績上位者が目指すと思うかもしれないが、成績だけでは語れない話がある。

それは家庭の懐具合だ。

子供を4年制大学に進学させられる資産が十分にある家庭であれば、中学卒業時点で進路を工学系に絞る必要が無い。進学校の普通科に進んでから理系・文系を考えればよい。

しかし高専は工学系しかないので、途中で文系に転進しようにも進路修正が効かない。

高専でも3年次終了して高卒資格を確保しながら大学受験すればよいのでは?

と思うかもしれないが、高専の3年次は大量の専門教科、実験・実習をこなさなければならず、5年間の中で2番目にハードな学年である(一番ハードなのは4年)。3年次で退学するにしても手が抜けないのが高専の3年生だ。

忙しい3年生をこなしながら、センター試験対策・二次試験対策はまず無理だ。やるならば浪人前提だろう。

私大文系ならランクを落とせば可能かもしれないが、そこまでして行きたい私大文系って何だろう。

話を戻そう。

つまりある程度学力のある裕福な家庭の子女は、中学卒業時点で進路を狭めるより、進学校に行って幅広く大学を選ぶほうが選択肢が広いので高専には進まないだろう。(もちろん中には家庭が裕福でも、親が高専出身だったり本人が高専進学を熱烈志望する場合はその限りではない)

そのため、あくまでも傾向だが高専に進むのは、地元進学校を狙える学力はあるが教育資金が潤沢で無い家庭の子女が多い。(あくまでも傾向)

私自身、4人兄弟で親が職人という家庭で育ったので、親の金で行けるのは高校が精一杯だった。

ご飯が食べられないとか穴だらけの服を着るほどの貧乏ではなかったが、やりたいことを何でもやらせてもらえるような家庭では無かった。

しかし幸いというか、自宅から通える範囲に高専があったので、なんとか親を説得して高校より2年修業期間が長いが通わせてもらった。

実際に入学してみると、同じような境遇の人間が案外多くて驚いたことを今でも思い出す。

先日も、仕事でお付き合いのある高専の先生と話をする機会があったが、昔ほどではないが、今も似たような傾向はあると言っていた。

ストレートで卒業するのは入学者の3/4

これはいろんなところで言われているから知っている人も多いかもしれないが、高専は大学と同じ高等教育機関なので、校則はあって無いようなもの。(今はもう少しあるのかな?)

少なくとも私の時代はパーマだろうが金髪だろうがピアスだろうがなんでもOKだった。

正確には、先生に多少小言は言われるが、黒に戻してこい!とか元に戻せとか言われることは無かった。そのあたりは基本的には大学と同じ。

そのかわり、年4回の定期試験の平均が赤点(60点未満)だと単位を落とす。2教科8単位以上落とすと問答無用で留年。高校のように補習・補講は無く、提出物/出席/試験結果が全て。

遊ぶのは勝手だが、勉強しない奴は去れ

を地で行くのが高専。税金で運営されている国立校なので当然と言えば当然か。

校則が無いのはこれ幸いと遊びまくり、留年→退学するのが全体の1/4程度いる。

授業進度が速い

校則が無いことに甘えて堕落するコースの他に、もう一つ脱落コースがある。それが速い授業進度についていけないこと。

工学部2~3年あたりでやる専門教科を高専3年次に始めるためには、高校でやる数学・物理の過程を2年で終える必要がある。

2年の後半には微積を始めないと3年次の専門教科に入れないからだ。

そんなの、進学校でも2年で高校3年分の学習を終えるよ!

と言う人もいるかもしれないが、進学校の3年生は1~2年で先取りした内容を受験対策としておさらいするのに対して、高専は3年次から大学過程に入る。数学で言えばラプラス変換やフーリエ変換、微分・偏微分方程式を理解しないと機械力学や流体力学に入れない。

私は機械工学科だったので力学系を例に挙げたが、電気系ならば交流理論や波形解析にフーリエ級数の知識が必須だろう。

そのため普通の高校過程の教科書が使えず、「高専の数学」という高専の授業進度に合わせた特殊な教科書を使う。そのせいか高専生は、数I,数IIとか数A, 数Bといった区分けを知らない。

高専は、5年間で高校3年分+大学4年の計7年分を詰め込むために授業進度が速い。この進度についていけない人間は脱落してしまう。

この脱落コースには、意外にも真面目な普通の学生がハマってしまうケースが少なくない。

私の同級生にも何人かいたが、共通していたのは、

・飲み込みが悪い
・途中で諦める

という性格だった。

飲み込みが悪いのは仕方が無いとしても、それでもなんとか進級する人は、理解するまで先生のオフィスに聞きに行ったり、寮で頭のいい奴に教えてもらって必死に頑張る人だが、留年する人は途中で理解を諦めていた。性格が出る部分である。

…なんて言うとすごく大変なように聞こえるが、普通に授業を聞いて復習していれば大丈夫なので、過度に恐れることはない。

高専卒で企業に入る

高専の就職率100%はウソでは無い。求人は10倍、卒業生1人あたり10社の求人がある計算だ。

企業側からすると、中小企業で高専生を採用するのは至難の業。よぼど地元志向の学生でないとまず来てくれない。私もベンチャー企業に勤めていたとき高専卒を採用しようとしたが、知名度が全く無くて採用できなかった。

優等生ではないものの留年することなく5年で卒業できた私は、当時学校に求人に来ていた東証一部上場の某国内電機メーカーに何の苦労もせず就職することができた。

大学生が就職活動で何十社も受けているのが別の世界に見えるぐらい、就職は簡単だった。

ここでの話は「学校推薦」で就活した場合の話で、当然、内定を貰えば他社は受けられない。

給与面での話

私がその東証一部上場企業に入社したとき、同期入社の大卒に比べて月給が-2万円、高卒は私より-2万だった。ちなみに院卒は大卒の+2万。

適当に決めたのかはわからないが、年齢1歳につき+1万円という設定。学校で勉強してきた年月で給与差を付けるというのは、スタートラインが同じ新卒の給与としては納得しやすかったと思う。

よく「高専卒は大卒に比べて安く使えるから重宝される」と揶揄されるが、視点を変えれば「大卒は院卒にくらべて安く使えるから重宝される」とあまり変わらない。正直、その程度の給与差はあまり気にならなかった。

大企業だと、昇進・昇級のスピードが学歴によって差があるケースが多い。

ただそれも、課長職以上の管理職になってしまえば学歴差は関係無くなる企業がほとんどではないだろうか。

大卒同期との関係

入社当初は、2歳年上の大卒同期になんか引け目というか畏怖の念を抱いていた。

卒業するとき、先生達は「君たちはこれから大卒と一緒に仕事することも多いだろうが引け目を感じる必要は全く無い、自信を持って行きなさい」と言ってくれたのだが、やはり年の差2つは大きい。大学で4年間、専門課程を勉強してきたのだから俺たちよりもスゴイんだろうなと。

しかし、いざ入社してみるとその心配は杞憂だった。彼等は大卒の割には工学的知識が薄く、議論してみてもさほど実力差があるように思えなかった。

人によってはむしろ「本当に工学部を出てきたのだろうか?」と疑いたくなるような、いろんな意味でヤバイ奴もいた。

後で分かったことだが、大学1~2年は教養課程で、本格的に専門課程が始まるのは3年から。そのため専門科目は実質3~4年生の2年間しかやらない。

一方、高専は2年~5年で専門課程を学ぶ。大学より1年長い上に、カリキュラムは朝から晩までキッチキチに組まれているので、専門知識が厚いのだろう。

もちろん難関大学卒やコンピュータ大好きオタクみたいな人は入社時からずば抜けていたが、それ以外は大したことないな、というのが入社してからの感想だった。

そういえば新人研修を受けていると、大卒同期の一人が「ふぁ~、こんなに毎日朝早く起きるのなんて4年ぶりで体がついていかねぇ」と言ってて、最初は何言ってるのかよくわからなかった。

高専に進学するなら国立大の工学部編入を狙え!

高専卒のハンデとは?

多くの高専が掲げているのは「就職も良し、進学も良し」である。

就職率100%、1人10社以上の求人があるので5年で卒業して就職するのもいいし、専攻科に進む道もあるし、国立大3年次に編入して大学に進学する道もある。

私は家庭の事情もあって高専本科(5年)で卒業・就職したが、数回の転職の後、現在は上場企業の部長職に就いている。

会社では、普通に働いてきちんと成果をだせば高専卒であるハンデはほとんど感じなかったが、今までの人生で2つ問題になることがあった。

それは、外資系への転職海外赴任だ。

20代の頃、外資系の開発部門に転職を試みたことがあったが、ものの見事に撃沈した。

当時、不採用の理由はわからなかったが、後に業界の知人から、外資系は何はともあれ「大卒」が最低条件であると聞いた。昔から日本支社を持つ外資系なら、社員の紹介とか、業界での活躍、例えばオープンソースのコミッターで名前が売れているのであればそれを武器に入社することも出来るが、一般募集からの応募で大卒未満ではまず無理だろう。

もう一つは、25歳のとき、入社5年目の私は、サンノゼ(シリコンバレー)の開発拠点に赴任する話があったのだが、大卒で無かったためにアメリカの専門職ビザ(H1-b)が取れなかった。

正確には高専卒でも取れなくもないのだが、ビザ申請時には実務経験3年が大学1年分の知識にみなされるので、私の場合は6年の実務経験が必要だった。

専門職ビザは、国内で不足する高度な人材を外国人で補うビザなので、大学も出ていない人間にホイホイ発行されるものではない。

このときは私の代わりに大卒の後輩が赴任したのだが、私が仕事を教えている部下が、私が熱望していた海外のソフトウェア開発現場に赴任するのだから、このときの悔しさは言葉に表すことができない。

顔では笑って送り出したが、嫉妬心と虚無感が溢れてきてしばらく仕事にならなかった。そんな自分の器の小ささも嫌になっていた。

目の前に転がってきたチャンスが指の間からこぼれて掴めない。

このときばかりは大学を出ていない自分を心底呪った。

国公立大の工学部だったら3年次に編入できる

高専のいいところは、国公立大の3年次に編入するルートがあるところだろう。

もちろん誰でも行けるわけではないが、5年間そこそこ真面目に勉強すれば、比較的楽に行くことができる。

少なくとも受験勉強を経てセンター試験を受けるより、編入試験のほうがはるかに楽だ。

大学も、高専である程度勉強してきていることが前提で試験を課すので、編入試験はさほど捻った問題は出ない。塾による対策は出来ないが過去問をしっかりやれば対策が可能である。

また、もう一つのメリットは、一般入試では国公立は1校しか受験できないが、編入試験は日程が重ならない限り何校でも受けられる。

一般入試で旧帝大を狙うのはかなり勉強しないと難しいが、高専からの編入であればロボコンに参加したり部活動を続けながらでも十分に狙える。

技科大を滑り止めにする

編入試験で国公立大の編入を狙っても、希望の大学に受からない場合も当然ある。

その場合、多くの編入生は技術科学大学、通称「技科大」を滑り止めに受けられる。

技科大とは、国立の技術科学大学で、愛知県豊橋市にある豊橋技術科学大学と、新潟県長岡市にある長岡技術科学大学の2校ある。

これらの大学はまさに高専生を受入れるために作られた単科大学で、大学院までセットになっている大学である。

一般の高校生がセンター試験を受けて入学することもできるが、1年次入学は各科数十人程度しか割り当てられていない。高専生が3年次から大量に編入してくるからだ。

学校にもよるが、高専で成績が半分より上だと推薦が取れる場合が多い。(もちろん推薦もらえば他は受けられないが)

仮に推薦がもらえなくても、真面目に5年間勉強していれば大体受かるので、ここを滑り止めにしてレベルの高い国公立を狙う、という戦略を取る人が多い。そもそも技科大に受からなければ、国公立編入は無理だろう。

こういうと技科大を舐めているように聞こえるが、技科大は技科大でいいところがある。

まず、学部後期(3~4年)と博士課程前期(修士1~2年)がセットなので、学部生のほとんどが修士課程に進む。

院試はあるが、内部推薦を使えば試験はかなり簡単。

高専→技科大→技科大院卒は「国立大院卒」になるので、就職ではかなり有利。

もちろん、外資系ではMasterは大卒よりも強い。海外赴任のビザ取得時の学歴も楽々クリア。

専攻科に進む

技科大は国立大なので授業料は比較的安いが、豊橋と長岡にしかないので、学寮に入るか下宿、もしくはアパートを借りる必要がある。理系大学なのでアルバイトはあまり出来ないと考えると、大学卒業までには親の金銭的サポートが必須だ。

そういった金銭的サポートを得るのが難しい場合、高専の専攻科に進むという選択肢がある。

大学3~4年次に相当する部分を専攻科で学べるよう各高専に設置されているが、大学と違うところはその学歴だろう。

大学は過程を修了すれば卒業となり自動的に「学士」になるが、専攻科は過程を修了しても学士にはならない。

学位授与機構に自身の研究内容のレポートを提出し、学位授与試験を受ける必要がある。

と言っても、先に提出したレポートを元に試験問題が作られるので受験者の95%は合格する。

それをパスすれば晴れて「学士」が授与され、大学卒業と同じ学位になる。

ちなみに、放送大学の学位も同様に学位授与機構に申請する点では専攻科と同じだ。

高専のメリット・デメリット

改めて高専のメリット・デメリットを整理しよう。

メリット

・国立なので学費が安い
・国立大1~2年よりも高専4~5年のほうが授業料安い
・センター試験を経ずに国公立3年次に編入できる
・日程が重ならなければ何校でも編入試験を受けられる
・高望みしなければ技科大という受け皿がある

デメリット

・高専入学後、コース変更が出来ない(文転とか他の学科への転科とか)
・授業進度が速く、人によってはついていけなくなる
・専攻科に進む場合、同じ学校に7年間も通うことになる(飽きる)

高専進学のまとめ

自身の経験を元にいろいろと書いてしまったが、子供のときから工作やモノ作り、魔改造が好きな人には高専はオススメのコースだと思う。

しかし中学3年の時点で、将来の進路に幅を持たせたい人は高専に進むのはオススメしない。

高専に入学してから「やっぱり美術のほうに進みたい」とか「法律をやりたい」と思っても進路変更は容易ではない。そういった可能性のある人は大学進学を見据えた高校を選択すべきだろう。

私自身は、高専に行ってよかったと思っている。

非常に低コストで大学工学部並みの知識を身につけることができたし、曲がりなりにも上場企業の開発部門で統括する立場に就くことができたのは高専に進んだおかげだと思う。私の育った家庭では大学進学は無理だったからだ。

もし大学に進んで「学士」になっていれば、シリコンバレーに行けたのは後輩ではなく自分だったのではないか、と考えてしまうこともたまにはある。

もしあのときアメリカに行けたら今はどうなっていたのだろうか?もっとステップアップできたのだろうか?

しかし、苦しい家計の中で高専に行かせてくれた親には感謝こそすれ、恨む気持ちはこれっぽっちも無い。

旧帝大工学部3年次編入→大学院で修士卒になった同級生は、「合法的な学歴ロンダリング」と自虐的に言っていたが、大学受験のために無駄な労力費やすことなく、その時間をクラブ活動とロボコンで謳歌しつつ、本当に必要な勉強に注力して学歴を積み上げた。

実際に大学に編入してみても、センター+二次試験を経て入ってきたプロパー学生との学力の差はさほど感じず、専門教科に至っては高専でやったことを大学3年次~4年次で復習するようなもの、と言っていた。

今から高専を目指す未来のエンジニア諸氏には、是非、無駄な大学受験勉強を回避しつつ大学3年次編入を目指して欲しい。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
もやもやっとする話
mickをフォローする
スポンサーリンク
老兵エンジニアの戯言

コメント

タイトルとURLをコピーしました